WEKO3
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を有効的に利用して構築された最初の光電気集積回路であるといえる.以上の研究により,チャープ構造を用いたPCW スローライトデバイスの潜在的な優位性を示し,その応用について議論した.これらの結果はPCW デバイスの産業応用や新たな物理現象の探求への展開を期待させる.そして,提案したオンチップ光相関計は将来の光信号通信を含めたピコ秒パルス測定を簡便に行える測定器となると期待される.", "subitem_description_type": "Abstract"}]}, "item_7_dissertation_number_67": {"attribute_name": "学位授与番号", "attribute_value_mlt": [{"subitem_dissertationnumber": "甲第420号"}]}, "item_7_full_name_2": {"attribute_name": "著者(ヨミ)", "attribute_value_mlt": [{"nameIdentifiers": [{"nameIdentifier": "21748", "nameIdentifierScheme": "WEKO"}], "names": [{"name": "イシクラ, ノリヒロ"}]}]}, "item_7_full_name_3": {"attribute_name": "著者別名", "attribute_value_mlt": [{"nameIdentifiers": [{"nameIdentifier": "21749", "nameIdentifierScheme": "WEKO"}], "names": [{"name": "Ishikura, Norihiro"}]}]}, "item_7_subject_24": {"attribute_name": "国立国会図書館分類", "attribute_value_mlt": [{"subitem_subject": "UT51", "subitem_subject_scheme": "NDLC"}]}, "item_7_text_4": {"attribute_name": "著者所属", "attribute_value_mlt": [{"subitem_text_value": 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High performance photonic crystal slow light devices and their applications
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|
Item type | 学位論文 / Thesis or Dissertation(1) | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
公開日 | 2014-05-13 | |||||
タイトル | ||||||
言語 | en | |||||
タイトル | High performance photonic crystal slow light devices and their applications | |||||
言語 | ||||||
言語 | eng | |||||
資源タイプ | ||||||
資源タイプ識別子 | http://purl.org/coar/resource_type/c_db06 | |||||
資源タイプ | doctoral thesis | |||||
アクセス権 | ||||||
アクセス権 | open access | |||||
アクセス権URI | http://purl.org/coar/access_right/c_abf2 | |||||
著者 |
石倉, 徳洋
× 石倉, 徳洋 |
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著者(ヨミ) | ||||||
識別子Scheme | WEKO | |||||
識別子 | 21748 | |||||
姓名 | イシクラ, ノリヒロ | |||||
著者別名 | ||||||
識別子Scheme | WEKO | |||||
識別子 | 21749 | |||||
姓名 | Ishikura, Norihiro | |||||
著者所属 | ||||||
Department of Physics, Electrical and Computer Engineering, Graduate School of Engineering, Yokohama National University | ||||||
抄録 | ||||||
内容記述タイプ | Abstract | |||||
内容記述 | 本論文ではシリコン基板上に製作したフォトニック結晶スローライト導波路(PCW) の高性能化とその応用について議論する.情報トラフィックは指数関数的に増加しており,ノード部分で光電変換を多用する現在の通信ネットワークでは消費電力や信号処理速度の点で限界を迎えるといわれている.これに対応するために,小型で多機能な高密度光集積回路が求められている.その中で,シリコンを母体とした光導波路やその関連技術の総称であるシリコンフォトニクスは大いに期待されている.光集積回路としては先行してきたインジウムリンを母体としたデバイスとは異なり,その製作法は大規模集積電気回路の生産手法として成熟したシリコンCMOS プロセスとの互換性を有し,集積度は年率60%で増加している.このような進展によりスーパーコンピュータやデータセンターの光インターコネクトでの利用が始まりつつある.シリコンフォトニクスでは電気回路との融合が容易なのでCPU 同士などの,より短距離の通信にも適用されていくと考えられる.一方でメトロネットワークのような長距離光通信の観点からは,複雑な回路構成に対応するため,シリコンフォトニクスデバイスの利用が考えられている.このようなデバイスの性能をさらに向上させる方法として,巨大な1 次分散媒質中で発生するスローライト技術が挙げられる.特にPCW で発生するスローライトは,構造調整により特性を自由にエンジニアリングできるので有望である.我々の研究室では,PCW の構造パラメータを徐々に変化させたチャープを導入することで,可変相対遅延7 を得ていた.可変相対遅延は,デバイス内に蓄積できる光ビット数であり,スローライトの最も魅力的な性能である出射時刻の可変性の性能指標である.しかしこの性能は製作プロセスに制約され,その実証にはレーザ光加熱のための大型の顕微光学系が必要であった.また,これまでのPCWの研究は個別デバイスに留まり,電気回路との一体集積やその応用については議論されてこなかった.PCW での光信号の伝搬速度(群速度)はフォトニックバンドの傾きで表される.フォトニックバンドは3 次元時間領域有限差分 (FDTD) 法により得られた.我々の研究室が従来,提案していたPCW の構造をさらに微調整することにより,製作トレランスの高いスローライト構造を得た.また結合効率を向上させるためのシリコン細線導波路 (PWW) とPCW の接続構造を検討し,接続付近のPCW の幅を断熱的に増加させる構造が有効であることを示した.本研究では,このようなPCW を電子ビーム (EB) 描画プロセスとCMOS 互換プロセスで製作することを検討した.EB 描画プロセスでは,高精度な加工プロセスを使用することで,従来のPCW の空気穴の面内ゆらぎが3 nm 程度から2 nm 以下に抑制された.このようなプロセスは,研究レベルでは自由度が高く便利なものの将来の産業応用には限界がある.一方でCMOS プロセスを利用できれば,圧倒的な大規模集積が行えると期待されてきた.しかしフォトニクス分野ではこのような研究がほとんど行われてこなかった.そこで,CMOS 互換プロセスを用いた一連の製作・評価の研究フローを確立した.PCW,PWW,スポットサイズ変換器 (SSC),ヒータやPN ダイオードのチューナーの各種の構造パラメータはFDTD 法や有限要素法 (FEM) を用いて決定された.得られたデバイスの光学基礎特性を測定した.透過スペクトル測定ではレンズ光学系で構築した測定系を利用し,遅延スペクトル測定では300 MHz もしくは10 GHz の正弦波変調信号を利用した変調位相シフト法を利用した.EB 描画プロセスで製作したPCW では,面内ゆらぎの抑制でよりコヒーレンス性の高い300 MHz での変調信号を用いても,明瞭なスローライト特性が観測された.そして,伝搬帯域の中央において群屈折率100 のスローライトが確認された.これはFDTD 法から予想される計算値とよく一致した.CMOS 互換プロセスで製作したデバイスにおいては,長さの異なるPWW から仕様とおよそ一致する伝搬損失3.0 dB/cm を得た.異なる形状を持つPWW 曲げ導波路では,曲げ半径3 μm において,通常の円弧構造での曲げ損失0.2 dB/round から,横方向にPWW を30 nm オフセットした構造を用いて0.03 dB/round,緩和曲線の一種であるクロソイド曲線を用いて0.01 dB/round 以下まで損失が減少し,その有効性が示された.これらはFDTD 法で予想された計算値とおよそ一致した.PCW では,伝搬帯域においてほぼ平坦な透過特性が観測され,また伝搬損失10 dB/cm が得られた.これはEB 描画プロセスでの2.0 dB/cm よりは大きいものの,長さ数100 μm を使用する本研究では問題にならない値であった.外部光学系との結合効率はSSC により大幅に改善し,SSCの集積が極めて困難なEB 描画プロセスのPCW と比較して,12 dB の透過率の向上が得られた. PCW では,EB 描画プロセスで製作されたデバイスと同様に伝搬帯域の中央において群屈折率100 程度の遅延ピークを持つスローライトが観測された.これはFDTD 法で予想された計算値とおよそ一致した.また,PCW の幅をなめらかに増加させた接続構造では,前述の計算結果から予想された結合効率の~4 dB の改善を確認した.スローライト特性が得られた長さ400 μm のPCW に対して,レーザ光局所加熱で生じる熱光学効果により屈折率チャープを形成した.PCW 中央部を加熱したとき,加熱パワーを強くしていくと理論的に予想されるように遅延は平均化しながら減少し,可変幅95 ps が得られた.このとき,導波路面内に形成された温度差は190 K であった.このような条件でピコ秒パルスを入射すると,可変幅72 ps と出射パルスの平均幅2.0 psで定義される可変相対遅延は36 となった.さらに出射パルスの圧縮を利用した改善法を提案し,この値を110 まで一気に向上させた.これは他機関の最高値の10 を圧倒的に上回る現在の世界最高値である.このような動作をヒータ集積デバイスでも確認した.まず,PCW 近傍に点欠陥型の共振器を配置したデバイスを製作し,ヒータ加熱パワーによるPCW 面内の温度分布を評価した.ヒータ幅を線形に変化させたシングルヒータでは加熱パワー1130 mW で,レーザ光加熱と一致する最大190 K の山成の温度分布が観測された.また,7 組のヒータを集積したマルチヒータでは中央の1 組を600 mW で加熱したとき,最大280 K の温度変化が観測された.これらはFEM による結果とよく一致した.シングルヒータをLSPCW(長さ300 μm)近傍に集積したデバイスでは,加熱パワーによる遅延スペクトルの変化を確認した.これはレーザ光加熱と同様の振る舞いであった.マルチヒータ集積LSPCW では,加熱パターンを最適に調整し,線形な屈折率分布を形成するとシングルヒータに似た可変遅延が得られ,2 次関数的な屈折率分布を形成すると任意の2 次分散(群速度分散)が形成された.波長幅3 nm での平均値から見積もられた群速度分散の可変範囲は?10.2 ? 17.5 ps/nm であり,過去のオンチップタイプの分散器と比較して100 倍以上大きな値が得られた.これはチャープ構造をヒータにより自由に調整できたためであると考えられる.このようなデバイスをピコ秒パルスの分散補償に応用すると,正負いずれのプリチャープパルスでも,チャープ構造を調整することで分散補償によりパルス圧縮され,その動作を示した.このようなスローライトデバイスを光相関計に応用することを提案した.光相関計は分岐させた光パルスの時間差に対する相関出力からパルス波形を得る測定器であり,電子計測が困難な短パルスの評価に広く用いられている.しかし従来は時間差を変えるのに機械式の可変遅延器が用いられ,大型で走査速度が10 Hz 以下と低かった.そこで,可変遅延器としてスローライトデバイスを用いた.スローライトデバイスは圧倒的に小さく,加熱式なので機械式よりも100 倍以上高速で,走査速度1 kHz まで正しいパルス波形が観測された.これは光断層撮影,THz 時間領域分光など,動画のような高速な相関データ取得が必要な応用に極めて有効だと考えられる.以上の研究を元に,PCW でのスローライト効果を最大限利用して光相関計のオンチップ集積を目指した.ここでは,可変遅延器と光検出器 (PD) にPCW を利用した.シリコンにおいて波長1.55 μm の光は通常吸収されないが, PCW のスローライト効果で増幅される二光子吸収 (TPA) で発生する光電流を検出するTPA-PD を用いた.ここでは不要な非線形光学現象を抑制するために,光路長を調整するために用意した長尺なPWW は幅広にした.可変遅延器とTPA-PD の基礎動作は,新たに設計した多モード干渉器構造のカップラに接続された外部モニタポートを介して,評価された.製作されたオンチップ光相関計の可変遅延器とTPA PD は所望通りの動作を示し,TPA-PD への光パワー,その感度特性および暗電流の大小関係から,ピコ秒パルスの観測が可能であることが示された.可変遅延器への加熱パワーとそのときの遅延を関連付けると,走査速度100 Hz でピコ秒パルスの時間波形が得られた.このとき,100 Gbps を超える伝送速度に対応する幅4?8 ps の入射パルスにおいて,幅の変化に応じた有意な波形変化が観測され,オンチップ光相関計の基礎動作が示された.我々が知るかぎり,これは異なる用途のPCW を有効的に利用して構築された最初の光電気集積回路であるといえる.以上の研究により,チャープ構造を用いたPCW スローライトデバイスの潜在的な優位性を示し,その応用について議論した.これらの結果はPCW デバイスの産業応用や新たな物理現象の探求への展開を期待させる.そして,提案したオンチップ光相関計は将来の光信号通信を含めたピコ秒パルス測定を簡便に行える測定器となると期待される. | |||||
書誌情報 |
発行日 2014-03-26 |
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著者版フラグ | ||||||
出版タイプ | VoR | |||||
出版タイプResource | http://purl.org/coar/version/c_970fb48d4fbd8a85 | |||||
その他のタイトル | ||||||
その他のタイトル | フォトニック結晶スローライトデバイスの高性能化とその応用 | |||||
国立国会図書館分類 | ||||||
主題Scheme | NDLC | |||||
主題 | UT51 | |||||
学位名 | ||||||
学位名 | 博士(工学) | |||||
学位授与機関 | ||||||
学位授与機関識別子Scheme | kakenhi | |||||
学位授与機関識別子 | 12701 | |||||
学位授与機関名 | 横浜国立大学 | |||||
学位授与年月日 | ||||||
学位授与年月日 | 2014-03-26 | |||||
学位授与番号 | ||||||
学位授与番号 | 甲第420号 |